第一節 <太古>
(最古の)天皇氏は、木徳①をもって王となった。歳星が摂提格に位置した年以来(君臨し)、政治らしい政治もせずに(人民を)教化し(てよく治まっ)た。兄弟十二人、それぞれ一万八千年続いた。
(次の)地皇氏は、火徳②をもって王となった。兄弟十二人、それぞれ一万八千年続いた。
(次の)人皇氏は、兄弟九人、(中国全土を)九州に分けて、その長となっ(て統治し)た。(それが)全部で百五十代、合計四万五千六百年続いた。 人皇氏以来、有巣(ゆうそう)氏というものが現れた。木を鳥の巣のように組み立てて(家とし)、木の果実を食って(生活をして)いた。 (次いで)燧人(すいじん)氏に至り、はじめて木をこすり合わせて(火をおこし)人民に煮炊きを教えた。 (これらは)文字出現前のこととて、その年代、国都とも考証することができない。 『十八史略 (現代語訳と解説) 竹内弘行』
① 木徳・・・五行(木、火、土、金、水の五大元素)の第一に位置する木が象徴する徳。古代中国では、王者は五行のどれか一つの徳を身につけて国を治めると考えられた。
② 火徳・・・五行の第二に位置する火の徳。木が燃えて火が生じることから考えられた順序。
