酒杯談義 4

 祖千秋の話が続く。「葡萄酒なら、むろん夜光杯を使わなければならない。『葡萄の美酒夜光の杯、飲まんと欲すれば琵琶馬上に催(うなが)す』と詩でも詠われている。葡萄酒のような赤い色は、われわれのような男子が飲むには、いささか豪気が足りない。葡萄の美酒を夜光杯につげば、酒は鮮血のような色になり、まるで血を呑むような気になる。 岳武穆(岳飛の諡・おくりな)も、『壮士飢えては餐(くら)う胡慮(こりょ・異民族)の肉、笑談渇しては飲む匈奴(きょうど・異民族)の血』と詞に残しておる。何と勇壮なことよ!」

 令弧冲(れいこちゅう)はしきりにうなずいた。浅学の彼は、祖千秋が唐詩や宋詞を引用しても、意味が全て分かるわけではないが、「笑談渇しては飲む匈奴の血」という一節は、豪気にあふれて胸に壮快感が広がった。

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