明と倭寇Ⅴ

 中央から遠く離れた福建、広東、浙江など東南沿海の地方では、海禁令が充分に守られず、軍、官、民が癒着し、海防の体制も厳重ではなく、海上における密貿易はなかば公然と行われていた。

 特に、浙江省の揚子江河口に近い島、雙嶼(そうしょ)では、中国人の許棟4兄弟が、中国で正式に貿易を許されていなかったポルトガル人を大規模に雙嶼へ誘いこみ、中国商人、琉球商人が私貿易をする国際密貿易基地となった。 

 許棟の配下には王直がいた。はじめ塩商だったが失敗して海上貿易家に転じたという。海禁のゆるみに乗じて禁制品の密貿易を行い、数年で巨富をたくわえることに成功した。

 雙嶼における貿易は、もともと国禁をおかした密貿易ではあるが、最初のうちは比較的平和に行われていた。しかし次第に密貿易者に海盗がまじったり、交易者同士の葛藤から殺傷事件がおこったりした。また貨物獲得のため官史に贈賄するものなどがあり、地方官で密貿易者と手を組んで暴利をむさぶるものがあらわれた。『倭寇・田中建夫』

 

 

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